(写真:ITmedia PC USER)
連載:牧ノブユキのワークアラウンド(PC・スマホの周辺機器やアクセサリー業界の裏話をお届けします)より 値段がネックとなって購入をためらっているPC周辺機器をしばらくウォッチしていると、ある日突然、実売価格がガクンと下がることがある。大喜びで飛び付きたくなるものだが、ちょっと待ってほしい。 なぜなら、こうした突発的な値下げには、飛び付いてよい値下げと、しばらく待ってじっくり見極めるべき値下げの2種類があるからだ。それらはどのような理由によるものだろうか。また見分け方はあるのだろうか。今回はこうした、値引きの裏事情についてみていこう。
複数の販売店での同時値下げは何らかの「事情」あり?
PC周辺機器は進化が激しいことから、モデルチェンジも頻繁に行われ、同一製品の価格は時間がたつにつれて相対的に下がっていく。メモリやHDD、グラフィックスカードのように、一時的に値上がりする製品もあるが、それらは供給の関係によるもので、長期的に見ると下降線を描いているものだ。 つまり待ってさえいれば、PC周辺機器の価格は下がるものなのだが、同じ「下がる」でも、好ましい下がり方と、そうでない下がり方とがある。前者であれば買い時だし、後者は製品そのものの価値を疑った方がよい。言い方を変えると、価格の下がり方をみれば、その製品が「当たり」なのか「外れ」なのかが分かることがあるのだ。 「ただ価格が下がっただけで、そんなことが見分けられるわけがない」「少なくとも素人には無理なはず」と決めつけてかかる人もいるかもしれないが、そんなことはない。手っ取り早いのは、あるタイミングで行われた値下げが「特定の販売店でのみ行われた」か、それとも「多くの販売店で一斉に値下げされた」かを確認することだ。 多くの販売店でほぼ同時に値下げが行われたのであれば、それはメーカーから何らかの指示があったことを意味する。どの販売店にも均等に販売の機会を与えて、後から「不平等だ」などとクレームが入らないようにするわけだ。もちろん、在庫に対する補填(ほてん)は後から入る。 これは一見すると健全なようだが、中には何らかの事情があることも多い。具体的には、その製品が潜在的な不具合を抱えており、後継製品の投入前に、価格を引き下げて在庫を一掃しようとしているケースだ。回収をするほどの不具合ではないが、後継製品と比較されると見劣りするという場合に、よく使われる手である。 また不具合はなくとも、後継製品の方が機能・性能・価格などの点において明らかに勝っており、それらの発表後は現行製品が売れなくなると見込まれる場合に、同様にメーカー主導で値引きが行われることがある。どちらの場合も、市場在庫だけでなく、メーカーの倉庫にある在庫まで全部なくす必要があるため、販売店からしても「えっ、いままでの価格は何だったの?」と驚くほどの値引きが行われることがある。 この2つのケースでは、安くなったからといって飛び付くと、後悔することになるのは明白だ。前者の場合は、使っているうちに不具合が出てくる可能性があるし、後者の場合は購入後それほど時間がたたないうちに魅力的な後継製品が出てきて「明らかに後継製品の方がいいじゃん、ハメられた!」と地団駄(じだんだ)を踏むことになるからだ。