なぜ画面ロックを掛けない人がいるのか。その心理について考える■「安心感」で支持される指紋認証はじめに、冒頭で紹介したアンケートデータについて、もう少し詳しく解説しておきましょう。調査はインターネット上でのアンケートという形で行われ、調査期間は2020年12月24日から31日までの1週間。調査対象としての有効回答者数は428人、調査対象は「スマートフォンを所有する15歳から69歳の男女」となっています。インターネットアンケートであり、しかも無作為とは言えMMD研究所を知る人々による回答なので、それなりにネット利用に明るくセキュリティ意識も高めな人々であることが想像できますが、それでも冒頭で書いたように、スマホの画面ロックをしていない人が2~3割もいるという事実に驚きを隠せません。仮に、街頭アンケートや複数媒体でのアンケート方法を採用していた場合、この数字がどのように変化していたのか非常に興味深くもあります。筆者の予想では、画面ロックを掛けない人の割合がもう少し増えるのではないかと思うところです。iPhoneユーザーとAndroidユーザーの意識の乖離具合も気になる日本の人口分布や性別分布などを考えると、回答者が大きく偏っているとも思えない調査結果をさらに細かく見ていくと、スマホユーザーが多く利用している画面ロック方法が指紋認証であることが分かります。iPhoneユーザーは40.1%、Androidユーザーは44.8%で、その他の顔認証やパターン認証などを大きく引き離す結果となっています。iPhoneはメインストリーム機種で指紋認証を搭載していない機種が多いが、それでも指紋認証が多いという時点でiPhone 8以前やiPhone SEなどのユーザーの多さが示唆されるAndroidスマホの顔認証対応が進んで2~3年経つが、それでも顔認証を使っている人は非常に少ないまた、ユーザー視点として安心感を得られるロック方法を見ても指紋認証がダントツのトップです。Appleは同社が採用する顔認証システム「Face ID」について、「Face IDの誤認識率は100万分の1、対する指紋認証の誤認識率は5万分の1。だからFace IDは圧倒的にセキュアだ」といったプレゼンを行ったこともあります。しかし、現実には100万分の1でも5万分の1でも一般の生活利用で大差のある数字ではなく、しかもこのコロナ禍においてはマスク着用時に顔を認証しないなどの不便が重なり、顔認証のメリットがデメリットによって完全にマスクされてしまっている状況です。さらに言えば、Androidスマホによる顔認証はFace IDと比較して非常に簡易な認証方法であり、セキュリティレベルもそれほど高くありません(誤認識率が高い)。画面内指紋認証システムなどを搭載したAndroidスマホも登場してきている昨今、敢えて不安感(不信感)や不便感の強い顔認証を利用するメリットを感じないというのが、実際のところかもしれません。この「安心」という言葉には、日常利用で「安心して使える」という意味も含まれるかもしれないと思えば、コロナ禍で顔認証が不便であるために安心して使えないというニュアンスも読み取れるiPhoneのFace IDは通常のカメラ以外にドットプロジェクタや投光イルミネータなど複数のセンサーが用いられ、顔の情報を3次元的に照合する■画面ロックしない理由は「めんどくさいから」?それにしても、画面ロックそのものを全く掛けないという人が多い理由は、さすがに「生体認証やパターン認証を信用できないから」ではないでしょう。例えばiPhoneでは指紋認証を搭載せず顔認証のみの機種がメジャーですが、そういった機種で「顔認証は安心できない」と利用しなかったとしたら、iPhoneでの画面ロック不使用者がもっと増えていて良いはずですが、実際は5.7%程度です。では、なぜ画面ロックしないのでしょうか。筆者は単に「面倒だから」ではないかと推察します。もしかして、ただの面倒くさがり……?スマホ依存症などという言葉が取り沙汰されるようになって久しい現在、みなさんは1日に何回スマホを覗き込むでしょうか。「そんなもの数え切れない」という人も少なくないかと思います。友人や家族と話をしている間でも、暇さえあればスマホの画面を確認していたり、無意識のうちにSNSを開いていたりするのではないでしょうか。それほどまでにスマホをいじる頻度が高くなってしまうと、指紋認証すら面倒だと感じる人が出てきても不思議ではありません。ましてや、指紋認証センサーが本体の裏側にあったり、顔認証を利用するためにいちいちマスクを外していたとしたら、その煩わしさは想像できるところです。どうせいつも肌身離さず持ち歩き、数分ごとに画面を見ているスマホなら、画面ロックなど掛けないほうが楽でいい、という発想です。暇さえあればスマホを見ている、という光景も当たり前になったそもそも「スマホに見られて困るようなデータも情報も入れていない」と考えている人もいるでしょう。MMD研究所の調査には「自分以外のスマートフォンを見たことがあるか」(他人のスマホを開いて中を見たことがあるか)という項目もありますが、この調査によると、全体では56.5%の人が自分以外のスマートフォンを見たことがあると答えており、さらにその傾向は若い世代ほど高くなります。10代に至っては74.2%、実に4人に3人は他人のスマホを見たことがあると答えています。画面ロックを掛けない人が2~3割も存在し、さらに他人のスマホを開いて見たことがあるという人が半数以上にのぼるという事実を考えると、「スマホを他人に見られても気にしない」あるいは「他人のスマホを見ても問題ない」という層が一定数存在するとしか考えられません。恐らく、この場合の「他人のスマホを見る」というのも、その相手に許可をもらって見るということではないでしょう。相手に無断でスマホを覗く行為であると考えられるため、モラル意識の低さやリテラシー教育の不足を感じざるを得ません。巷のセキュリティ意識はそのようなものなのかと愕然としますが、その他の調査データや資料を探すほどに、その推察は案外間違っていないのではないかと感じてしまうところです。人はそこまで他人のスマホを覗き見ることや自分のスマホが覗き見られることに抵抗がないのだろうか実際のところ、スマホを誰でも自由に閲覧できる状態にして「困ることはない」などということは絶対にありません。個人情報は簡単に取得されてしまいますし、そもそもスマホ自体を自由に使われてしまうことによる損害やリスクは重大です。電話番号や住所を知られるだけでも大きなリスクですが、アプリやデータを勝手に削除されたり、勝手にSNSを利用されてなりすまし被害のようなケースやコミュニケーショントラブルが発生しないとも限りません。「スマホを勝手に弄って悪用する友人や家族などいない」と信用していたとしても、前述のように盗難されてスマホを見られたり悪用されるリスクは常にあるのです。スマホの画面ロックを設定するというのは、最低限のマナーでありセキュリティであると再確認しなければなりません。他人のスマホを覗き見ないというのは当然ですが、「他人にスマホの中身を見せない」ということもまた、マナーの1つであるという認識が必要です。人前でだらしない格好を見せないように、スマホの画面ロックをするのも当たり前のマナーにしたい■便利な道具だからこそ、最低限のセキュリティマナーをさまざまに調査の内容を精査してみましたが、それでも「AndroidユーザーがiPhoneユーザーより画面ロックをしない」理由がよく分からないままです。iPhoneと違ってAndroidスマホは指紋認証の普及率が高く、ほとんどの機種に搭載されているため、コロナ禍の現在においても画面ロック解除がひどく不便になったということはないはずです。AndroidユーザーのセキュリティリテラシーがiPhoneユーザーよりも有意に低い理由とは何か、画面ロックを面倒にしている技術的な問題があるのか。ここ数週間で筆者が調べた中では、これらの原因を特定することができませんでした。約3割もの人が画面ロックをしないという数字は、何度見ても「異様」です。画面ロックをすることが当たり前であり、画面ロックをしないなどという選択肢が一切存在しない筆者にしてみれば、異次元世界のルールでも見ているかのような気分です。このコラムの読者の中に、画面ロックを設定していない人はいますでしょうか。もしいるなら、その理由をぜひとも知りたいところです。そして画面ロックは絶対に設定して欲しいとも思います。自分だけではなく他人の個人情報も扱う万能デバイスだからこそ、最低限のセキュリティ意識は持って欲しい記事執筆:秋吉 健■関連リンク・エスマックス(S-MAX)・エスマックス(S-MAX) smaxjp on Twitter・S-MAX - Facebookページ・連載「秋吉 健のArcaic Singularity」記事一覧 - S-MAX・スマートフォンの認証システムとパスワードに関する調査 - MMD研究所・女性のスマホ狙い280台盗んだ容疑 札幌の男を追送検:北海道新聞 どうしん電子版Tweet
秋吉 健のArcaic Singularity:あなたのスマホ、画面ロックしてますか? 驚愕の調査データからスマホのセキュリティ意識について考える【コラム】
検索
About Me
ホット記事
-
アリババ系「菜鳥」がタイ物流大手と提携、東南アジアで最大規模の自動倉庫システム構築
30/03/2022 -
1万円で買える外部音取り込みモード&ノイキャン搭載、完全ワイヤレスイヤホン
28/04/2022 -
コピー・ケータイの道義性――もうひとつの資本主義をめぐる人類学
08/04/2022 -
ネットワーク機器やサービスの新製品・リリース予定製品を掲載!製品カタログの最新版を公開
12/02/2023