企業向けのスイッチは家庭・SOHO向けのスイッチと比べて高価である。企業のネットワークで使うには、家庭やSOHOにはない機能が必要とされるからだ。こうした企業向けスイッチの代表的な付加機能を中心に説明しよう。 |
複数のEthernetを収容する機能
いまやLANといえばEthernet、EthernetといえばUTPケーブル、と連想ゲームのようにキーワードが列挙される。UTPの規格のうち、10GBASE-Tは全二重通信しかサポートしないが、ギガビットまでの規格は「半二重通信(CSMA/CD)」と「全二重通信」の両方をサポートする。そのため、通信モードまで考慮すると、
の7つが実在する。
企業によっては、10年以上も前に導入した古くて遅い機器と、新しくて速い機器とがLAN内に混在している状況もありうる。特に企業向けのスイッチは、最新規格にいち早く対応する一方で、古くからある規格も切り捨てずに、より多くの通信モードに対応しなければならない。しかし、通信モードが7種もあると、数百台の端末を抱える企業のLANでは、そのうちの何種類かが混在する可能性はきわめて高い。
スイッチが複数の通信モードに対応しているとしても、ポートごとに通信モードを管理者が設定しなければならないのであれば、Ethernetの規格が増えるたびに管理者の負荷は増えていく一方だ。この場合、1台のスイッチにすべての通信モードの機器を接続して相互に通信できれば、機器のコストや管理者の負荷が軽減される。
このため、「オートネゴシエーション(Auto-Negotiation:自動調停)」が登場した。オートネゴシエーションは、複数の通信モードに対応した機器の間で情報をやり取りし、自動的に最適な通信モードを設定する仕組みだ(図1)。
図1 規格や通信モードを自動認識するオートネゴシエーション
オートネゴシエーション機能を持つスイッチは、接続相手がサポートする通信モードを知り、双方でサポートされるもっとも速い通信モードを選択する。
また、同じ速度で複数の選択肢があった場合には、より低い品質のケーブルで動作する通信モードが選択される。さらに、後述する「PAUSEフレーム」によるフロー制御の可否や、100BASE-T2や1000BASE-Tのマスター/スレーブの情報※1なども交換し、それぞれの機能の動作を最適化する。
※1:マスターとスレーブ 1Gbpsの1000BASE-Tでは、通信に送信側と受信側のどちらか一方の周波数を使用する。自身の周波数を提供する側を「マスター」、相手に合わせる側を「スレーブ」と呼ぶ。数年前に購入したプリンタは10BASE-T対応、3年前のパソコンは100BASE-TX対応、今年導入したサーバは1000BASE-T対応というのは、意外とよくある構成だ。この場合、全ポートが10BASE-T/100BASE-TX/1000BASE-Tのオートネゴシエーションに対応したスイッチを設置すれば、スイッチの方で自動的に適切な通信モードを調節してくれる。
(次ページ、「速度の差を吸収するフロー制御」に続く)
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