「au 使い放題MAX」「povo」「UQくりこしプラン」の三段構えで迎え撃つKDDI 新料金プラン

「au 使い放題MAX」「povo」「UQくりこしプラン」の三段構えで迎え撃つKDDI 新料金プラン

 この数カ月、携帯電話業界は近年、まれに見る慌ただしさだったと言えるだろう。その慌ただしさの原因は言うまでもなく、政府による携帯電話料金の値下げに対する圧力であり、各社の発表内容などと相まって、各方面で大きな話題となった。本誌でも数多くの記事が掲載され、本コラムでも各社の発表内の解説だけでなく、総務省が打ち出してきた施策についても取り上げてきた。

総務省の「アクションプラン」で、公正な競争環境は整備できるか?

  • どうすれば、携帯電話料金値下げが実現できるのか?

  •  そんな携帯電話料金の値下げ圧力の中で、ちょっとタイミングを見誤ったのがauだろう。

     auのサービスを提供するKDDIは、国内の電気通信事業を完全に独占していた電電公社(現在のNTTグループ)に対抗するため、1984年6月に設立された第二電電(DDI)を母体としており、「NTTに対抗する、競争する」ことをDNAとして、持ち合わせている。

     当初の長距離電話(340km超)の割引サービスでは、電電公社の通話料が3分400円だったのに対し、DDIをはじめとする新電電各社は3分300円を実現し、競争による料金の低廉化をはじめて実現した。ケータイの時代も2003年11月にauが初のパケット通信定額制プラン「EZフラット」を提供し、使い放題の道を切り開いた。ちなみに、NTTドコモはEZフラットにすぐに対抗できず、約半年後の2004年6月に基本使用料が月額6700円以上の料金プランの契約者のみに「パケ・ホーダイ」を提供し、全プラン対応は2年後の2006年1月まで待たなければならなかった。

    「au 使い放題MAX」「povo」「UQくりこしプラン」の三段構えで迎え撃つKDDI 新料金プラン

     そんなDNAを持つはずのKDDIだが、昨年12月の発表ではネット上を中心に、たいへん厳しい評価を受けてしまった。

     auはここ数年、4G LTEサービスでいち早くデータ通信の使い放題を実現する一方、NetflixやGoogle、Appleが提供する各サービスとのバンドルプランにも力を入れてきた。昨年3月に提供を開始した5Gサービスでも主要3社の中で、唯一、正式サービスとして、使い放題の料金プラン「データMAX 5G」を提供し、これにNetflixのサービスを組み合わせるプランをラインアップに加えていた。

     昨年12月に発表された料金プランはこの流れをくむもので、それまではNTTドコモが1年間無料で提供していたAmazonプライムとのバンドルを実現し、既存のNetflixと2つをバンドルするプランも合わせて発表された。

     料金プランの内容としては、昨今の巣ごもり需要などを考えれば、確実にニーズがあり、結果的に申し込みも順調だとされているが、発表のタイミングと表現が悪かった。auがこのプランを発表した昨年12月9日は、NTTドコモが「ahamo」を発表した一週間後であり、対抗プランを期待していたユーザーは肩すかしを食らった形になったためだ。

     これに加え、「データMAX 5G with Amazonプライム」などの月額料金の表記が家族割プラスをはじめ、光回線やCATV回線と組み合わせるauスマートバリュー、5Gスタート割などを組み合わせた各種割引適用後の「3980円/月~」を大きく表記したため、ネット上で炎上するほどの反感を買うことになった。

     一般的に「携帯電話料金がわかりにくい」とされる背景には、本来の割引前の価格をきちんと明示せず、複数の割引サービスを最大限に適用した結果ばかりをアピールしたため、実際に自分が支払う月額料金がいくらになるのかがわかりにくかったことが挙げられる。この点については、くり返しになるが、昨年10月に本連載の「どうすれば、携帯電話料金値下げが実現できるのか?」で説明したように、 ユーザーが料金プランの内容を理解できるように、まず「『素の料金プラン』を明示する」ことが必須条件だ。

     ところが、昨年12月のauの料金プランの発表は、こうした市場で醸成されつつあった空気感をまったく感じ取ることができず、従来通りの表現方法で告知したため、ユーザーの反発を買うことになったわけだ。

     その後の流れを時系列で追うと、12月18日にはNTTドコモが「ahamo」以外のプレミアプランの「5Gギガホ プレミア」と「ギガホ プレミア」、12月22日にはソフトバンクがオンライン専用「SoftBank on LINE」をはじめ、3ブランドの料金プランをそれぞれ発表し、結果的に2020年末の段階では、KDDIだけが一連の値下げ競争から取り残される形となってしまった。